受付のあるお葬式などでは香典を直接喪主に渡すことができないため、香典に包んだ金額をきちんと書いておかないと、さまざまなトラブルの原因になりかねません。
トラブル防止だけではなく、ご遺族の方の手間を少しでも減らすためにも、正しいマナーで香典袋に金額を書くようにしましょう。
見やすく改竄できない書き方が理想
香典は必ずしも喪主に直接渡すことができるわけではなく、お葬式では受付係に渡すことがほとんどです。自宅でのお葬式の場合でも、仏前に備えることが多く、大金が入っているにもかかわらず人の目や手に触れる場所に置かれることもあります。
そのため、自分が香典を包んだときに「何円」包んだのか、他の人が改竄できないように書いておく必要があります。また、ご遺族の方が確認するときに、読みやすいような字で書くことも大切です。
綺麗な字で縦書きにする
「綺麗な字」というのは、必ずしも上手に書くということではなく、読みやすく丁寧に書くことが大切です。字のうまい下手は個人差がありますが、受け取る人のことを考えた丁寧な文字を意識しましょう。
金額を書くときだけではなく、香典袋を書くときに見やすくするコツを簡単にご紹介します。
- 漢字は少し大きめ、ひらがなは少し小さめに大きさを統一する
- 縦書き文字は文字の中心を揃える(横書きは文字の下を揃える)
- 文字同士の間隔をできるだけ揃える
ひらがなを少しだけ小さくするのは、ちょっとした上級者向けのテクニックですが、文字を揃えるのは工夫次第で誰にでもできます。
文字の中心(横書きの場合は下)を揃えるには、サインペンと定規で縦の真っ直ぐな線を引いた紙を下に敷き、少し透かせて上から書くと読みやすい文字を簡単に書くことができます。
それでも難しい場合は、あらかじめパソコンなどで印刷した文字を下に敷いて書くようにしましょう。
改竄できない文字で書く
葬儀場などで行うお葬式の場合、受付が用意されるので直接遺族の方(喪主)に香典を渡すことができません。
受付係は基本的に親戚の方が担当します。受付の方が金額の改竄などをすることはまずあり得ないことですが、予期せぬトラブルを防止するためにも改竄のできない文字で書いておくようにしましょう。
具体的には「大字」と呼ばれる昔使われていた漢字を使います。アニメや漫画などでよく使われる「壱・弍・参」といった、少年心をくすぐるあのかっこいい漢字です。
金額に使用する大字一覧
大字は日常生活で使われることはありませんので、すぐに思い浮かばない人も多いですよね。まずは香典袋に金額を書くときに使用する漢字(大字)の一覧を見て見ましょう。
数字 | 漢字 | 備考 |
---|---|---|
1 | 壱 | |
2 | 弍 | |
3 | 参 | |
4 | 「死」を連想させるため使用しません | |
5 | 伍 | |
6 | 六 | 割り切れる数字のためあまり使用しません |
7 | 七 | |
8 | 八 | 割り切れる数字のためあまり使用しません |
9 | 「苦しみ」を連想させるため使用しません | |
10 | 拾 | |
千 | 仟 | 「阡」のどちらでも使用できます |
万 | 萬 | |
円 | 圓 | 「円」を使用することもできます |
四や九は死や苦しみを連想させるため、香典には使用しない金額のため、大字についても使用することはありません。
六、七、八の数字は、大字で難しい書き方もありますが、この数字自体が香典の金額ではあまり使われないこと、漢字が難しく慣れない人が筆でかくのは困難なこともあり、通常の漢数字を使われる事が一般的です。
具体的な金額の書き方
香典の金額を書くときには「一万円」などの金額だけではなく、金額の前に「金」を、金額の後に「園(也)」を書きます。
実際にどのように書くのか、香典に包まれることが多い金額ごとに確認してみましょう。
金額 | 大字(旧漢字) |
---|---|
3,000円 | 金参仟圓也 |
5,000円 | 金伍仟圓也 |
10,000円 | 金壱萬圓也 |
30,000円 | 金参萬圓也 |
50,000円 | 金伍萬圓也 |
100,000円 | 金拾萬圓也 |
縦書きで見たい人や、実際にお手本にしたい人は下記のPDFデータをダウンロードして印刷してご利用ください。(A4サイズで印刷すると中袋に書く時のサイズで印刷できます)
金額を書く場所はどこ?中袋がないときは?
金額を書くときは購入した香典袋に中袋が「ある」か「ない」かを確認します。もし中袋がない場合は、金額や住所も外袋に書くか、中袋を自作で用意する必要があります。
地域性にもよりますが、基本的には1万円以上の香典を包むときには中袋を用意するようにしましょう。
中袋が「ある」ときは中袋の表面中央に
現在市販されている香典袋には、中袋がついているものがほとんどです。中袋がついている場合は中袋の表面中央に、濃墨の筆(もしくは筆ペン)で金額を書きます。
もし筆や筆ペンがない場合や、綺麗に書く自信がない人はサインペンやボールペンで書くようにしましょう。
金額以外に書くこと
中袋には金額以外に「名前」「住所」を裏面に記入します。これは香典を受け取った喪主が、後で香典返しや法要の案内状などを送るときに使用するためです。
中袋がある香典袋を使うときは、下の画像のように必要な部分を書きましょう。
中袋が「ない」ときは外袋の裏側左下に
中袋がなく、自分で自作もしない場合(5,000円以下の香典の場合)は、外袋の裏側に直接金額と住所を書きます。
このとき、名前は外袋の表面に書いてありますので裏側に書く必要はありません。
金額以外に書くこと
中袋がない場合、必要なものは全て外袋に書きます。金額以外には「表書き」「名前」「住所」が必要です。
中袋のない香典袋を書き終えると、下の写真のようになります。
金額や住所の記入欄がある香典袋のときは?
あらかじめ金額や住所の記入欄が用意されている香典袋も市販されています。中袋がないタイプであれば、外袋を見るだけで記入欄があるかどうか分かりますが、中袋の場合は購入する前では判断ができないときもあります。
もし記入欄を無視して書いてしまうと、どこに何が書いてあるのかわかりにくくなってしまいますよね。
香典袋の書き方は「受け取った喪主がわかりやすいこと」が一番重要なマナーです。記入欄がある香典袋を使うときは、今回の記事で紹介している書き方ではなく、記入欄に沿って書くようにしてください。
記入欄は横書きが多い
今回の記事では縦書きで大字(旧漢字)を使って金額を書くように解説していますが、記入欄がある香典袋では横書きで記入欄が設けられていることがほとんどです。
横書きで金額を書く時は、大字ではなく普段から親しみなれているアラビア文字(1,2,3)で書いても問題ありません。その際、金額の頭には「金」もしくは「¥」を書き、桁数の改竄ができないようにしておきましょう。
香典の包み方と渡し方のマナー
中袋に金額を書いた後は、正しく包んで、正しいマナーで渡しましょう。ここでは簡単に包み方の手順と渡すときのポイントについて解説していきます。
香典の包み方
香典を包む時は、お札の向きに注意して包みます。具体的には次のような手順で包むと、お札の向きを間違えずに包む事ができます。
- 包むお札同士の向きを揃える
- お札の表(人物側)を手前にして中袋に入れる(中袋は開け口が手前になるように)
- 中袋と外袋の表面が一緒になるようにして外袋に入れる
中袋がない時は直接外袋に包むことになります。そのときもお札の向きは変わりませんので、外袋の名前のある方(表面)に、お札の裏側(人物がいない方)が来るようにお札を入れてください。
また、意外に知らない人が多いのですが、香典袋の裏側を見たときに重なりが下向きになるようにしましょう。重なりが上向き(下側が重なりの上に来る)になると、喜びを表す意味になります。
香典の包み方については、下記の記事で詳しく説明していますので、合わせてご覧ください。
香典の正しい包み方とは?お葬式の受付で恥をかかないための基本マナー
香典の渡し方
実際にお葬式に参列するときには、香典の渡し方にも注意しましょう。
お葬式によって受付があるかどうかも変わるため、お葬式によって渡し方のマナーは変わります。今回は葬儀場などで行われる受付のあるお葬式について手順(流れ)をまとめてみます。
- 受付の方に声かけと一礼
- 芳名帳に記帳
- 袱紗から香典を出し、受付の人から名前が読めるように両手で渡す
初めてお葬式に参列するときなど、不安なことだらけだと思います。受付がある場合はまず「挨拶と一礼」をすると、ほとんどの受付ではその後の流れを案内してくれます。
挨拶は「この度はご愁傷様さまでございます」や「心からご冥福をお祈りします」が一般的な挨拶です。
お通夜とお葬式の両方に参列する場合、すでに香典を渡しているときはその旨を受付に伝えましょう。くれぐれも2回香典を渡す事がないようにします。
香典の渡し方のマナーについては、下記の記事で詳しくご説明していますので、合わせてご覧ください。
まとめ
今回の記事では香典袋の金額の書き方について解説してきましたが、いかがだったでしょうか?金額の書き方についてポイントをまとめてみます。
- 基本は縦書きで大字(旧漢字)を使う
- 金額の前には「金」を書き、後ろには「圓(もしくは円)」を書く
- 記入欄がある時は記入欄に沿って書く(横書きOK)
- 横書きの時はいつも使う数字(1,2,3)で書いてOK
- 書く場所は中袋の表面中央(中袋がない時は外袋の裏側左下に住所とあわせて)
香典は、用意するだけでもたくさんのマナーや注意点があるので、初めての人は特に不安ばかりになってしまいますよね。
近くにたよれる大人がいる状況であれば、香典やお葬式のマナーについて聞くこともできますが、上京したてでは頼れる人もいないかもしれません。
香典の書き方一つ。心を込めて書くことで故人の弔いだけではなく、周りの人からの信頼にもつながります。若いから許されるではなく、年齢に関係なく正しいマナーを身につけるようにしましょう。