お葬式に出向く時に必ず持参する香典。この「香典を持参するとき」に必要なのが、袱紗(ふくさ)と呼ばれる香典を包むための布です。
今回の記事では「袱紗が欲しいけどどこで買えば良いのかわからない」「どんな袱紗を買えばいいの?」「封筒型?台付?袱紗の種類はどれがいい?」といった、袱紗を購入するときに必要な知識をご紹介いたします。
社会人の最低限のマナーとして、簡易的な袱紗でも良いので、冠婚葬祭の両方に使える袱紗を一つは用意しておきましょう。
袱紗(ふくさ)とは?なぜ必要なの?
日本では金品など大事なものを渡す時、汚れや破損を防ぐため、品物を相手に渡す直前まで風呂敷などの布で覆う文化があります。お葬式に持参する香典の場合は、香典袋が折れたり、汚れたりしない様に、小さな風呂敷に包んで持ち歩いていました。この小さな風呂敷を袱紗と言います。
近年では、香典袋を購入した時についてくるビニール袋のままお葬式会場へ持参する人が増えていますが・・・この行為はマナー違反。
香典袋は、袱紗で包むのが正式な方法です。
汚れのなさは「故人を偲ぶ想い」「ご家族へ向けた哀悼の意」を表します。古来から伝わる礼節を重んじることも大切ですが、故人・ご遺族を大切に思っている証として、持参する香典に汚れ・折れがつかないように、袱紗で包んで持参しましょう。
袱紗はどこで購入することができるの?
袱紗は日常的に使用するものではないので、いざ必要となった時にどこに売っているのかわからないという人も多いですよね。
最近ではネット通販でほとんどのものが手に入る時代。袱紗も例外ではありません。
ですが、お葬式は急に訪れる事がほとんどで、ネットで購入して配達を待っている時間がないこともありますよね。
ネット通販以外にも、意外に身近な場所で購入できますので、いざという時のためにも購入できる場所はチェックしておきましょう。
仏具店
「お仏壇のはせがわ」や「仏壇・仏具・位牌のメモリアル仏壇」など、仏壇・数珠など様々な弔事のアイテムを取り扱うお店を「仏具店」と呼びます。
仏具店は、袱紗を選ぶ上で最初に立ち寄っておきたい重要なお店です。
袱紗の価格帯は1,000円~10,000円と幅広く、素材はちりめんやシルク、ポリエステルなど様々な種類を取り扱っています。形についても、金封袱紗(封筒型)・袷(あわせ)袱紗・爪付き・台座付きなど、各種一通りは揃っているので、実物を手に取って比べることができます。
何よりも仏具店のスタッフさんは、袱紗の使い方や選び方の知識が豊富です。
年齢・職業・年収などに見合った正しい袱紗を選ぶためにも、自分の知識だけではなく、専門的な知識を持つスタッフに相談すること最適な袱紗を選ぶ事ができます。
また、袱紗の使い方や香典の包み方、お葬式のマナーなどに不安がある人も、袱紗を購入する時に一緒に質問してみるのも良いかもしれません。
礼服を扱うスーツ店
礼服を取り扱うスーツ店には、袱紗を始め、お葬式に参列する時に使う小物が揃っています。礼服のイメージにあった小物を一式まとめて買う事ができるので、初めて礼服を買う場合には買い忘れがなく便利です。
また、多くのスーツ店ではまとめ買いによる割引などもおこなっているので、リクルートスーツからビジネススーツに切り替えるタイミングなど、スーツの買い替えと一緒に礼服(平服)・袱紗・数珠などの一式を揃えることを検討してみましょう。
ただし、あくまでも「スーツ店」なので、お葬式などに使う小物類(袱紗・数珠など)の種類はあまり豊富ではない場合が多く、袱紗の場合は主に4,000円~6,000円のシルク素材の金封袱紗を多く扱っています。
百貨店・スーパー・文具店
近年では、百貨店やスーパーに入っているファッションブランドからも袱紗が販売されています。価格帯は4,000円~5,000円で、無地の中に浮き模様が入っていたり、レース調であったりと、ファッションナブルな金封袱紗が多くあります。
ファッションブランドで礼服から小物まで一式を揃えておくと、気持ちがしっかりと入ります。
また、香典袋を売っている文具店でも、シンプルな金封袱紗を取り扱っています。急にお葬式に参列することになった場合、香典袋と名前を書く時に使う薄墨の筆ペンを一緒に買うことができるので、いざという時に安心です。
100円均一
街のあちこちで見かける100円均一ショップにも、取り扱いが簡単な金封袱紗が販売されています。ちりめん風に加工されたポリエステル地の袱紗は、台座がしっかりしていて、とても100円とは思えません。
100円均一ショップは街のあちこちにあるので、急な不幸があったときに、近場で買うことができてとても便利です。
ただし、100円均一は店舗によって置いてある商品にかなりバラツキがあるので、地域によってはどこの100円均一にも袱紗の取り扱いがない場合もあります。
雑貨品を購入する時などになんとなくチェックしておいて、いざという時に備えておくのも良いですね。
ネット通販
楽天市場・Amazonなどのネット通販ではたくさんの袱紗が取り扱われています。
価格帯は500円~10,000円と幅広く、素材の種類はシルク、ちりめん、ポリエステルなど豊富で、形も袷(あわせ)・台付・爪付・金封と全てが揃っています。
たくさんの種類があるので、知識がない状態でネット通販で購入をすると、せっかくの袱紗がマナー違反になってしまうなど、逆効果になることもありますので注意しましょう。
また、配達状況などによってお葬式・お通夜に間に合わない可能性もあるため、訃報を受けてからの準備の場合にはネット通販は利用せずに、実店舗での購入をするようにしてください。
袱紗(ふくさ)を買う時は形状や色にも注意
袱紗を買う時、いざ見始めると様々な形や色があり、どの袱紗を購入すれば良いのか悩んでしまいますよね・・・。
一口に袱紗と言っても、結婚式などお祝い事に使う慶事用の袱紗と、お葬式などに使う弔事用の袱紗があります。
そして、どちらの袱紗も同じ売り場に売られていることが多いので、自分の好みだけで選んでしまうと結婚式用のお祝い事の袱紗をお葬式に持参してしまう。という最悪のマナー違反をしてしまう可能性もあります。
マナー違反にならない様、基礎知識を事前に知ってから購入しましょう。
袱紗の色・柄
袱紗の慶事・弔事は基本的に「色」と「柄」で決まります。そのため、この2つのポイントさえ押さえておけば最悪のマナー違反だけは逃れる事ができますので、必ず覚えておきましょう!
袱紗の色について
袱紗の色は、①弔事用は寒色系、②慶事用は暖色系、③両方使えるのが紫。の3つのパターンがあることを覚えておきましょう。
袱紗の柄について
近年ではファッション性を重視して、「浮き模様」「レース」「蓮の花の刺繍入り」など様々な柄の袱紗が売られています。
お葬式などの弔事の場ではあまり派手な装飾品はNGですが、うっすらわかるくらいの柄であれば問題ありません。
ただし、鶴、亀、松竹梅、鳳凰、扇など、縁起がよいとされる柄の刺繍は色が寒色系であっても慶事用なので、お葬式などの弔事では使ってはいけません。
日頃から人付き合いが多く、冠婚葬祭に参列する機会が多い人の場合など、弔事と慶事で袱紗を使い分ける場合は柄入りのものを複数用意しておくのも良いですね。
そのような場合でも一つは無地のものを用意しておき、どんな状況でも使えるようにしておくようにしましょう。
袱紗の形状
袱紗には封筒のように「入れる(挟む)タイプ」のものと、風呂敷のように「包むタイプ」の2種類のタイプがあります。どちらのタイプのものでも使用用途が変わることはありませんので、ご自身のスタイルに合った袱紗を使うようにしましょう。
入れる(挟む)タイプのもの
入れるタイプの袱紗は一般的に「簡易的な袱紗」として位置付けられ、誰でも簡単に使う事ができる反面、みる人によっては子供っぽさを感じてしまう場合もあるかもしれません。
ですが、最近では若い世代を中心に袱紗を使わない人が増えてきているので、簡易的なものでも20代で袱紗を使っているだけで「マナーのできる人」と印象付けることもできます。
金封袱紗
封筒の形をしていて、香典袋を入れる所に固い台紙が入った袱紗を「金封袱紗」と呼びます。お葬式会場の受付で、サッと香典袋を出せるメリットがあります。一方で、大きさが香典袋と同じなので、少々かさばるところがデメリット。
この「金封袱紗」はマスクケースや通帳ケースなど、普段使いができるものも売られています。
包むタイプのもの
小さな正方形の布の袱紗で、香典袋を包むようにして使用するタイプのものです。包むタイプの袱紗は、包み方のマナーを覚える必要性や、袱紗から香典を取り出すときのマナーなども分かりにくいので、きちんとマナーを習った事がある人に向いています。
必ずしもそうでなくてはいけないということではありませんが、30代中盤以降、会社や社会での立場が上がってくる年代になったら、包むタイプの袱紗の使い方を学ぶようにしてみましょう。
袷袱紗(あわせふくさ)
正方形の布2枚を表裏に合わせた袱紗を「袷袱紗」と呼びます。使用後に小さく折り畳めることが、最大のメリットです。
この袷袱紗は香典やご祝儀の袱紗としてだけではなく、小さな手土産を包む時にも使用できます。お店によっては、「風呂敷型」と呼んでいる場合もあります。
袱紗の種類の中でも最も使い方が難しい(包み方のマナーや、綺麗に包みには少しコツがいる)とされています。年齢や役職などによっては、正しいマナー講習などを受けたうえで使用するようにしましょう。
爪付袱紗
袷袱紗の場合、ただの正方形の布の形をしているため、香典袋を包んだ後でも留め具がないので持ち歩いている時に袱紗が開いてしまう事があるので、自分で留め具を用意する必要があります。
爪付き袱紗はあらかじめ爪と呼ばれる留め具がついているので、自分で留め具を用意する必要がありません。
現在市販されている袷袱紗のほとんどが、この爪付き袱紗のタイプになっていますが、中には爪のないものもあるので、購入前に爪の有無を確認しておきましょう。
台付袱紗
風呂敷型の袱紗に、香典袋を置く台座がついた袱紗を「台付袱紗」と呼びます。台座が付くと、初めに香典袋を置く場所が分かるので、簡単に綺麗に包む事ができます。
また、ほとんどの商品で、台座に固定用のゴムがついているので、持ち歩いているときに台座がずれることもありません。正式な袱紗を持ちたいが、取り扱いに不安があるという方におすすめです。
台付袱紗の中にも爪があるものとないものがあります。ほとんどが爪付きの商品になっていますが、念の為に購入前に爪の有無も確認しておきましょう。
袱紗(ふくさ)を買う時間がない時は
「急な訃報を受けて会社から直接お葬式に参列する」など、いざというときに袱紗を持ち合わせていない場合があります。
そんな時は、白や寒色系のハンカチを袱紗の代用として使うことが可能です。
使うハンカチは未使用のものでなくても大丈夫ですが、必ずアイロンでしわを伸ばした清潔なものを使うようにしましょう。
素材に細かい指定はありませんが、アイロンがけをする必要があるので、日頃から持ち歩くハンカチも大きめのアイロンがけが出来るものにしておくと安心ですね。
また、どうしても手もとに清潔なハンカチがない場合は、コンビニなどで購入することも出来ます。近くで袱紗を売っている場所はないけど、ハンカチなら買える。という状況もたくさんあると思いますので、ハンカチで代用することも覚えて置いてください。
慶事と弔事での袱紗(ふくさ)の包み方の違い
袱紗の色や柄によっては弔事と慶事で兼用することもできますが、それぞれの場面によって包み方に違いがあります。
せっかく袱紗を揃えても、使い方を誤っては元も子もありませんので、きちんと包み方を復習しておきましょう。
弔事(お葬式・お通夜など)
包むタイプの袱紗を弔事で使う時は、亡くなられた故人を忍び、瞼を閉じる、頭を下げる。という意味から、角を下に向けて包みます。具体的には以下の順番です。
- 上下に袱紗の角が来るように袱紗をテーブルにおく
- 上下の中心線から右側に熨斗袋を置く
- 右→下→上→左から熨斗袋に向かって折る
※入れる(挟む)タイプの袱紗は、左側に蓋がくるような向きで香典袋を入れます。(左開き)
お葬式などの弔事では、袱紗が左開きになるように香典袋を包むため、爪が付いている場合は爪が左側になるように袱紗を開きます。もし爪がついていない場合は台が右側になるようにします。
※爪も台もない場合は袱紗が菱形になるような角度で、机の上などに開いてください
袱紗も香典袋と同じで、上から下に重なるように包みます。
爪付きの袱紗の場合は、留め具(爪)がついているのでしっかりと留めて中の香典が落ちないようにします。
留め具がついていない袱紗や、ハンカチ・風呂敷で代用する場合は留めずに持参するか、紐などで軽く留めて完成です。
慶事(結婚式などのお祝い事)
包むタイプの袱紗を慶事で使う時は、ふってくる福をたくさん受け止められる様、角が上を向く様に包みます。具体的には以下の順番です。
- 上下に袱紗の角が来るように袱紗をテーブルにおく
- 上下の中心線から右側に熨斗袋を置く
- 右→下→上→左から熨斗袋に向かって折る
※入れる(挟む)タイプの袱紗は、右側に蓋がくるような向きで香典袋を入れます。(右びらき)
袱紗(ふくさ)に包んだ香典の渡し方
袱紗は包み方にもマナーがありますが、持参した香典を受付の方・ご遺族の方に渡す時にもマナーがあります。
包むときは自宅でゆっくり時間をかける事ができますが、お葬式の受付などでは周囲の目もあるのでスムーズに渡せるように、参列前にはしっかりと復習しておきましょう。
また、包むタイプの袱紗だと扱いが難しい場合がありますので、心配な方はあらかじめ入れるタイプの金封袱紗などを使用するようにしてください。
香典の渡し方
- お悔やみの言葉を述べます。「心からお悔やみ申し上げます」「このたびはご愁傷様です」
- バッグやジャケットの内ポケットから袱紗を出す
- 自分から「お香典」の文字が読めるような向きで、右手に袱紗を乗せ、左手で蓋を開き、左手で香典袋を取り出す
- 袱紗を折り畳み、相手に「お香典」の文字が向く様、袱紗の上に香典袋を乗せる
- 受付の方に渡す
ここで、よくあるマナー違反の例も挙げておきます。多く見られる場面ですので、一見こちらの方が正しく感じてしまいそうですが、明らかにマナー違反なので注意しましょう。
<マナー違反の例>
- お葬式会場の受付で列に並んでいる時、あらかじめ香典袋を出しておく
- 香典袋を直接手に持つ
<2人以上の香典を渡す方法>
2人以上の時は、1つの袱紗に包んでよいとされています。きれいに包むことができれば、何人分を包んでも問題ありません。渡し方は1人のときと同じで、香典袋を重ねた状態でお渡しするようにしましょう。
まとめ
弔事に必ず使う「袱紗」は、1人1枚は持っておきたいもの。色柄選びや使い方など、最も大切なポイントは次の2つです。
- 初めて使う袱紗は「紫色の無地の金封袱紗」がおすすめ
- 年齢や立場が上がる(30代中盤以降)のに合わせて台付袱紗などの「包むタイプ」に変更する
袱紗に関するマナーは、どの袱紗を使うのかという「選ぶところ」からスタートします。包む対応の袱紗は扱い方が少し難しくなるので、ある程度の社会経験をしてから使うようにしても遅くありません。
ただし、袱紗を使うのは社会人としての最低限のマナーとも言えますので、新卒の方であっても20代の方であっても、簡易的な金封袱紗だけでも必ず一つは用意するようにしましょう。