お葬式に参列するときに必ず必要になる香典。その香典を包む香典袋にはたくさんの種類があり、金額や宗教によって適切なものがあると知っていますか?
この香典袋は常日頃から家に常備しているものではないので、いざ必要になった時にどんなものを用意したらいいいのか分からない。と、困った経験がある人も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、香典袋についてどんな種類があるのか、どうやって選べばいいのかを解説していきます。
これだけ見れば迷わない!香典袋の選び方早見表
香典袋を選ぶときは①宗教・宗派と②香典の金額を基準にして選びます。それぞれの選び方の基準など、詳しい説明は後述しますが、今すぐ簡単に選びたい方は下記の早見表をみて、必要な香典袋を選んでください。
宗教 | 四十九日以前 | 四十九日以降 | 香典袋の絵柄 |
---|---|---|---|
仏教 | 御霊前 | 御仏前 | 無地 ハスの花 |
仏教 (浄土真宗、真宗大谷派、曹洞宗) |
御仏前 | ||
キリスト教(カトリック) | 御花料 御ミサ料 御霊前 |
無地 十字架 ユリの花 |
|
キリスト教(プロテスタント) | 献花料 御花料 忌慰料 |
||
神式 | 御神前 御玉串料 御榊料 |
御神前 御玉串料 |
無地 |
無宗教、宗派が分からない場合 | 御霊前 御香典 |
御仏前 御香典 |
無地 |
コンビニなど手軽に購入できる場所では、どの宗教・宗派にも対応できるように「無地の封筒」のものが用意されていることがほとんどです。
表書きは後から自分で書くこともできるので、不安なときは無地の短冊が同封されているものを選びましょう。字に自信がない人は、あらかじめ書かれている短冊が同封されているものを選ぶと、見栄え良く香典を包むことができます。
香典の金額 | 水引 | 紙質 | サイズ |
---|---|---|---|
5,000円以下 (印刷多当) | 結び切りの水引が印刷されたもの | 普通の紙 | 一般的なサイズ (約18.5cm × 11cm) |
30,000円以下 (水引金封) | 黒白か黄白の5本の水引 | 普通の紙、もしくは和紙 | 一般的なサイズ (約18.5cm × 11cm) |
100,000円以下 (中金封) | 双銀の7本の水引 | 高級和紙 | 少し大きめのサイズ (約20cm × 13cm) |
100,000円以上 (大金封・特大金封) | 双銀の10本の水引 | 高級和紙 | 大きめ (約21cm × 15cm以上) |
香典の金額が多くなるほど、水引の本数が多くなり香典袋のサイズも大きくなります。
水引の本数や紙質などは見た目で判断できますが、サイズについては比較するものがないとなかなか判断が難しいこともあります。よく分からないときは、パッケージの下部や裏面に記載されいている目安となる金額を参考にして選びましょう。
キリスト教では水引がないものを使用するのが一般的なマナーです。もし水引のあるものを使用するときは「黒白」か「双銀」の水引を選んでください。
香典袋の選び方①表書きの種類に注意
香典袋や祝儀袋には「表書き」と呼ばれる、中に何が入っているのかを伝える為の文字を書きます。香典袋には「香典」を入れているので「御香典」と書きたくなるところですが、宗教・宗派によって考え方が異なるため故人の宗教に合わせた表書きを書くのが一般的なマナー。
短冊に印刷がされているものであれば、短冊を変えることで代用することができますが、香典袋に直接印刷されているものは後で変えることができません。あらかじめ故人の宗教・宗派を確認してから用意するようにしましょう。
原則ほとんどの宗教・宗派に使える表書き
表書きの中で最も汎用性が高いものとして「御香典(御香奠)」や「御香料」、「御霊前」があげられます。
お通夜やお葬式への参列はあらかじめ予想できるものではなく、急な用意が必要で故人の宗教を知らないことも。喪主に確認するのが確実ですが、死別の悲しみを受け止めるだけでも大変な時期ですので、確認しにくいものですよね。
故人の宗教がわからない場合や、無宗教のお葬式の場合は特に汎用性の高い「御霊前」を表書きに使うようにしましょう。
仏教で使える表書き
仏教では「御霊前」か「御仏前(御佛前)」のどちらかの表書きを使用します。
「御霊前」は汎用性の高い表書きとしても紹介しましたが、仏教では使い方に少し注意が必要です。仏教には様々な宗派があり、その宗派の一つである浄土真宗では「御霊前」を使いません。
また、浄土真宗以外の宗派でも「御霊前」を使用するのは、お通夜やお葬式、初七日などの四十九日法要を行う前だけです。
四十九日以降の法要や浄土真宗では「御仏前」を使うようにしましょう。
神道で使える表書き
神道(神式)では「御神前」や「御玉串料」、「御榊料」を使用します。
仏教のお葬式や法要では「お焼香」を行いますが、神式ではお焼香の代わりに「玉串奉奠」が行われます。そのため、「御香料」や「御香典」といった表書きの代わりに「御玉串料」や「御榊料」を使うようにしましょう。
また、神道では人が亡くなった後は家を守る神様になると考えられているので、「御仏前」ではなく「御神前」を使います。
キリスト教で使える表書き
キリスト教にも仏教と同じようにたくさんの宗派があります。ここでは日本のキリスト教で多い宗派の「プロテスタント」と「カトリック」を見ていきましょう。
宗派 | 表書き | |
---|---|---|
プロテスタント | 御花料 | 献花料・忌慰料 |
カトリック | 御ミサ料・御霊前 |
プロテスタントとカトリックの両方で共通して使用できる表書きは「御花料」だけですので、宗派がわからない場合は「御花料」を使います。
※自分で表書きを書くときの注意点
市販されている香典袋の多くは表書きがあらかじめ印刷されているか、印刷済みの短冊が同封されています。自分で表書きを書くときには次の点に注意して書くようにしましょう。
- 薄墨の筆(もしくは筆ペン)を使う
- できるだけ短冊を使用する
お通夜やお葬式は急に訪れるため、墨を用意する時間がなかった。涙で墨が薄くなった。というような理由から、香典袋の表書きや名前は薄墨で書くことがマナーです。
短冊は使用してもしなくてもマナー違反になりませんが、短冊に書くことで失敗しても書き直しができます。また、字に自信がない人でも、印刷したものを下敷きにすることで見栄え良く書くことができるので、なるべく使うようにしましょう。
香典袋の選び方②香典の金額に適した香典袋を選ぶ
最近では、100円均一にもシンプルなものから豪華な見た目のものまで、たくさんの種類の香典袋がありますよね。
種類がたくさんあると、どれにしようか悩んでしまいますが、香典袋には包む金額によって選ぶ基準があります。好みのものや、見えをはって豪華なものを選ぶのではなく、基準にあった香典袋を選ぶようにしましょう。
5千円以下は水引が印刷された「印刷多当」
叔父・叔母以上に遠い親戚、友人や知人、会社関係の人のお葬式では3,000~5,000円程度の香典を包むことが多くなります。
この金額の香典の場合、豪華な香典袋は使用せずに金額と中身が釣り合うデザインのものを使用します。具体的には水引が印刷されたもので、余計な装飾などのないものを選びましょう。
インターネットで購入するときは「印刷多当 不祝儀袋」と検索することで、水引が印刷されたものを検索することができます。
3万円以下は黒白か双銀の水引の「水引金封」
ご自身の年齢にもよりますが、両親以外の家族(祖父母・兄弟・叔父・叔母)のお葬式の時には1万円〜3万円程度の香典を包むことが多くなります。
この金額帯の香典を包むときは、水引は印刷ではなくきちんと本物で用意されているものを使用します。水引には本数や色のパターンがありますが、黒白で5本の水引がついたものであれば基本的には間違いありません。
水引には黄白のものもありますが、これは主に関西地方で使用されています。最近では関東でも黄白を使う習慣がありますが、四十九日(忌明け)以降、もしくは一周忌以降の法要で使用されるのが一般的なので、お葬式やお通夜では黒白のものを使うようにしましょう。
10万円以下は双銀の「中金封」
30代・40代の人が家族(両親・祖父母・兄弟)のお葬式に参列するときは、3万円〜10万円の香典を用意することが多くなります。
この金額帯の香典を包む時には「中金封」と呼ばれる香典袋が必要となり、通常の香典袋よりも見た目も豪華でサイズも少し大きくなります。一般的な香典袋の平均サイズが「18cm × 11cm」に対し、中金封は「19cm × 12cm」程度のやや大きめです。
水引は7本のもので、色は双銀(左右どちらも銀色)のものを選ぶようにしましょう。
豪華な袋を選ぼうとすると、結婚式などに使う祝儀用のものと勘違いしてしまうこともあります。水引の色や熨斗があるかどうかをみたり、パッケージに「弔事用」と書かれたものを選びましょう。
10万円以上は双銀の「大金封・特大金封」
親や子供がなくなった場合でも、3万円〜10万円の香典が一般的ですので、10万円以上を包むということはほとんどありません。
会社経営をしているなど、収入が多い方で10万円以上を包む時には、香典袋の中でも最も大きく豪華な「大金封」もしくは「特大金封」に包みます。
中金封よりもサイズが大きく「21cm × 14cm」以上のサイズになるものがほとんどです。水引は10本の双銀が使用されています。
このような香典袋は使用する人が少ないこともあり、コンビニや近所のスーパーでは購入することが難しいかもしれません。必要になった場合は仏具店などのお葬式に関連する商品を扱っている専門店や、ネット通販などで探してみてください。
※香典の金額相場
香典袋を用意するときは、自分と故人との関係性を考慮して、どのくらいの金額を包めばいいのかをあらかじめ確認しておきましょう。
下記の表は年齢を考慮していませんが、実際に香典を包む時には、自分の年齢に合わせて包む金額も大きくするのが一般的です。
故人との関係 | 香典の相場 |
---|---|
両親 | 5万円 ~ 10万円 |
祖父母 | 1万円 ~ 3万円 |
兄弟・姉妹 | 3万円 ~ 5万円 |
叔父・叔母 | 1万円 ~ 2万円 |
その他親戚 | 5千円 ~ 1万円 |
友人・知人 | 5千円 ~ 1万円 |
上司 | 5千円 ~ 1万円 |
同僚 | 5千円 ~ 1万円 |
香典の金額相場については「香典の相場は?個人との関係性と年代別の相場表」で詳しく解説していますので、こちらを参考にしてください。
香典袋の選び方③宗教に適した香典袋の絵柄・デザインを選ぶ
コンビニやスーパーなどで市販されている香典袋は、無地のものがほとんどで、香典袋に絵柄があることを知らない方も多いと思います。
基本的には無地のものを選んでいただければ、どの宗教のお葬式でもマナー違反にはなりませんが、ここでは絵柄のある香典袋について解説していきます。
【仏教】蓮の絵が入っている香典袋
仏教では「蓮」や「睡蓮」といった蓮華がシンボルとされています。仏教と蓮華はとても深い関係があり、浄土と呼ばれる仏様の世界には蓮華が咲いていると信じられ、お経の一節にも登場します。
日本のお葬式ではほとんどが仏式で行われますが、仏式のお葬式だからと言って必ずしも蓮の絵が入った香典袋を用意する必要はありません。故人が仏教を深く信仰している場合や、古くからある家柄の場合には蓮の絵が入っているものを用意することで、故人を思う気持ちを伝えましょう。
【キリスト教】十字架・ユリの花の絵が入っている香典袋
十字架とユリの花の絵が入っている香典袋の写真
キリスト教では無地、もしくは十字架とユリの花の絵柄が入っている香典袋を使用します。また、仏式や神式の時とは違い水引は使用しません。
仏具店など、お葬式に関連する商品を多く取り扱っている場所では、キリスト教用の香典袋も置いてあると思いますが、一般のスーパーやコンビニで購入するのは難しいこともあります。そのような場合は水引のあるものでもマナー違反にはなりませんので、無理して専用のものを用意する必要はありません。
また、香典袋の代わりに真っ白な無地の封筒で代用することもできます。
【神道・宗教不明】無地の香典袋
神式のお葬式で使う専用の絵柄はありません。神式の場合や宗教がわからない場合は無地の香典袋を選ぶようにしましょう。
ここでの「無地」は絵柄が入っていないという意味ですので、和紙の柄などは問題ありません。3万円以上の香典を包む場合には、高級和紙が使用されている香典袋を選ぶことで、見た目と金額が釣り合うようになります。
香典袋はコンビニやネット通販のものでOK
お葬式やお通夜はいつ行われるのか前もって予想することが難しく、香典袋をあらかじめ用意しておくこともマナー的にあまり良いとは言えません。そのため、訃報を受けてから急いで用意する必要があります。
一度でも買った経験がある人なら、どこに売っているのかすぐに思いつきますが、初めて購入するときはなかなか想像もつかない人もいると思います。ここではどんな場所でどんな香典袋を購入することができるのか、ご説明していきます。
コンビニ・スーパー
普段の買い物でも多く利用するコンビニやスーパーが、香典袋を購入するのに一番手近な場所となります。
特にコンビニは24時間営業で、都会でも田舎でも店内の陳列などがある程度統一されているので、急に準備が必要になった時でも迷うことなく購入することができます。
ただし、応急処置的に陳列されているだけの場所が多いため、種類に限りがあることがほとんどです。金額が多い時の香典袋(大金封・特大金封)は購入できないことがありますので注意しましょう。
文具店・100円均一
大型の文具店や100円均一では、かなりの種類の香典袋が揃っています。100円均一では原価の問題から高級和紙が使用される「中金封」や「大金封・特大金封」などは置いていないことがありますが、それでもほとんどの香典袋は揃います。
また、中袋やお布施に使用するための無地の白い封筒なども陳列されているので、喪主や遺族として必要なものを揃えるためにも便利です。
仏具店
仏具店では仏壇だけではなく、お葬式に必要な小物や香典袋も取り揃えています。
普段から用事のあるお店ではないため、どこに仏具店があるのか把握している人も少ないとは思います。キリスト教専用の香典袋や、金額の多い香典を包む大金封など、他のお店では購入しにくい香典袋を探している時にオススメです。
もちろん、香典袋を持参するときに必要な袱紗や、お葬式で使う数珠なども併せて購入することができます。また、お葬式の作法や、香典袋の書き方について相談をすることもできます。
amazonや楽天などのECサイト
ネットでなんでも買うことができる今の時代では、香典袋もネットで検索するとたくさん出てきます。種類も多く、コンビニやスーパーで購入することが難しい、キリスト教専用の香典袋や大金封も購入できるのもメリットのひとつです。
ただし、香典袋単体で購入すると送料がかかってしまい割高になってしまうことがあったり、知識がない人の場合、どの香典袋を購入すればいいのかわからないこともあるので、注意が必要です。
香典袋は正しく使ってこそ
マナーを守った正しい香典袋を選ぶことができても、香典袋の書き方や包み方を間違えてしまうと台無しです。また、間違えた書き方や包み方は、香典を受け取った遺族が香典を把握する時に手間を増やしてしまう原因にもなります。
香典袋の正しい書き方
香典袋には「外袋」と「中袋」の二つの袋(封筒)があります。中袋がある場合とない場合では書き方が変わりますが、ここでは中袋がある場合の書き方について説明します。
香典を受け取った遺族が、誰から何円をもらったのか、香典返しをどこに送ればいいのかがわかるように、香典袋には次のことを記載します。
- 表書き
- 自分の名前(フルネーム)
- 香典の金額
- 自分の住所
どこに何を書くのかは、下の図をご参考にしてください。
香典袋の正しい包み方
香典袋の書き方と同様に、包み方も中袋があるかないかで変わりますが、ここでは中袋がある場合の包み方をご紹介します。
香典袋を包むときの手順は次の通りです。
- お札の向きを揃える
- 中袋の表とお札の表が反対方向になるようにお札を入れる
- 中袋の表と外袋の表が同じ方向になるように外袋に入れる
- 外袋の裏面は上側が上に重なるように閉じる
※画像はクリックで拡大できます
香典袋に関するよくあるご質問
- お葬式の時の表書きは「御香典」でもいいですか?
- 「御香典」や「御霊前」は表書きの中でも汎用性の高いもので、多くの宗教で使用することができます。故人の方が信仰されていた宗教がわからない場合は「御香典」でも構いませんが、あらかじめ宗教がわかっている場合には、その宗教にあった表書きを使うようにしましょう。
- お葬式の時、香典袋の水引の色は何色のものを使えばいいですか?
- 関東の場合、香典の金額が3万円以下であれば黒白、5万円以上であれば双銀の水引を使うのが一般的です。関西(特に京都)では黄白の水引を使います。
- 購入した香典袋に中袋がありません。どうすればいいですか?
- 地域性にもよりますが、神奈川県海老名市周辺では5,000円程度(1万円以下)の香典であれば中袋はなくても問題ありません。1万円以上の香典の時は中袋がある方が良いとされることが多いので、香典袋を買い直すか白い封筒などで代用するようにしてください。
- 香典袋に記入欄があったのですが、記入欄に併せて書いていいのですか?
- 市販されている香典袋には、金額や住所などを書く場所があらかじめ用意されているものがあります。記入欄が用意されている場合は、金額なども縦書きではなく記入欄にあわせて横書きで記入するようにします。
- 余った香典袋は他のことに使ってもいいですか?
- 香典袋は「香典」を包むための袋なので、香典を出すときにマナー違反にならないものであれば他のこと(法事や他の方のお葬式)に使用しても問題ありません。ただし、お祝い事やお金の支払いなどに香典袋を使用するのは、相手に不快な思いをさせてしまいますので、使用しないようにしましょう。
まとめ
今回の記事ではお葬式やお通夜、法事などで使用する「香典袋」について、選ぶ方や購入できる場所について解説してきました。要点をまとめると次の通りです。
- 「御香典」や「御霊前」は汎用性の高い表書き
- 絵柄は無地のものを選ぶと全ての宗教で使うことができる
- 金額によって豪華さ(サイズや水引の数、袋の大きさ)が変わる
- 香典袋はコンビニやスーパー、インターネットでも購入できる
香典袋にはたくさんのマナーがあり、宗教ごとに細かい決まりなどもありますが、汎用性の高いものがあることがわかりました。急な対応が必要でベストなものが選べない状況でも、最低限、汎用性の高いものを覚えておくだけで大きなマナー違反を避けることができますね。
準備に多少時間がある場合や、ご自身の年齢、個人との関係性を考慮して、どこまでマナーや作法を守るべきか判断できるだけの知識はつけておくようにしましょう。