急な訃報を受けたけど、どうしてもお通夜やお葬式に参列できそうにない。代理を頼める親戚や知り合いも見つからず、香典を出すことができない。
そんな時は、後日の弔問の際に持参してもマナー違反にはなりません。
ただし、遠方に住んでいていつ弔問に行けるか分からない。行けるとしても1週間以上後になってしまう。というような場合は、お悔やみ状と一緒に香典を郵送することも検討しましょう。
今回の記事では「香典の現金書留」について、手順やマナーの解説をしていきます。
香典を郵送で送る方法
香典を郵送する場合、香典の金額相場や書き方、包み方の基本となるマナーは普段の香典と変わりません。
郵送で送るからといって無理に難しく考えずに、まずは通常の香典と同じように包んで、香典を用意することから始めましょう。
【手順1】通常通りに香典を包む
香典を郵送する場合、まずは通常通りに香典を包みます。香典を包むときは特に難しいマナーなどはありませんが、香典袋の選び方や金額、書き方などに注意しながら包みましょう。
市販の香典袋には、金額による豪華さの違い、宗教によるデザインや表書きの違いがあります。中袋の有無もありますが、1万円以内の広電の場合は中袋の有無はあまり気にする必要はありません。(1万円以上の時は中袋があるものを選びましょう)
できる限り故人様の宗教に合わせた香典袋を選ぶのが理想ですが、時間がない場合や宗教・宗派がどうしても分からない場合は、無地の香典袋で「御香典」もしくは「御霊前」と書かれたものを選ぶようにします。
香典の金額は自分の年齢と故人様との関係性によって異なります。よほど近い身内(親・兄弟・姉妹など)以外では1万円以下の金額になることがほとんどです。
包む金額が決まったら、適切なお札を用意しますが、その際新札やピン札などのお札、極端に汚れたり破れいてるお札は避けましょう。
もし手元に新札やピン札(もしくはそれに近いくらい綺麗なお札)しかない場合は、一度縦か横のどちらかに折り目をつけて使うようにします。
お札を包むときはお札同士を揃えて、香典袋の正面側にお札の裏面が来るように入れてください。
香典袋には、表書きの他に「自分の名前」「住所」「包んだ金額」などを書きます。
書き方には厳密なルールがあるわけではなりませんが、受け取ったご遺族の方がわかりやすいように、決まった位置に決まった内容を書くようにしましょう。
市販の香典袋にはあらかじめ記入欄が設けられていることも多いので、そのような場合は記入欄に沿って記入してください。
香典袋には中袋がある場合とない場合があり、それぞれ包む方(書き方も)が多少変わりますが、基本的な考え方は変わりません。
注意するポイントは①お札の向きが正面を向かないこと②香典袋の裏側の重なり順が下向きになることの2つです。
【手順2】手紙を添える
代理の方に届けてもらうこともありますが、香典は直接手渡しをするのが基本。
どれだけ正しく包んであったとしても、香典(お金)だけを送るのはマナー違反です。何よりも受け取ったご遺族の方が寂しさを感じてしまうのが想像できます。
そのため、香典を郵送するときには必ず「お悔やみ状」と呼ばれる手紙を一緒に送るようにしましょう。
【手順3】郵便局の現金書留で送る
香典はお金を包んでいるものなので、郵送するときは必ず「現金書留」で送ります。
荷物や手紙を送る方法には、郵便局の普通郵便の他にも、各運送会社が提供しているサービスを利用することもできますが、現金を郵送できるのは「現金書留」だけです。
これは郵便法という法律で定められているものですので、ご自身の判断によって普通郵便などで送ることがないようにしてください。
現金書留はお近くの郵便局に専用の封筒が用意されていて、香典袋も入るサイズになっているので、包んだ香典とお悔やみ状を持って、郵便局に行きましょう。
香典はいつまでに送ればいいの?
香典はいつまでに渡すと言った明確な決まりはありませんが、お葬式・お通夜の香典には「香典返し」の用意が必要です。
あまりお葬式から期間が空いてしまうと、ご遺族の方が香典返しを用意するのが二度手間になるため、できるだけ早く送るようにしましょう。
理想は訃報を受け取ってから一週間以内で、どれだけ遅くとも1ヶ月以内には届くように現金書留で送ります。
手紙を同封することで気持ちをより伝える
お悔やみ状を同封するのは最低限のマナーという考えでもありますが、それ以前にご自身のお気持ちを正しく伝える方法でもあります。
悲しみの気持ちはもちろんのこと、ご遺族の方への労いの気持ちが正しく伝わるように、書き方のマナーなどもチェックしておきましょう。
お悔やみ状の書き方の記事リンク
書き方のマナー
日本の文化として「書き言葉」と「話し言葉」があり、お葬式などで使われるお悔やみの言葉「ご愁傷様です」は話し言葉になるので、お悔やみ状には用いりません。
このように少し細かいと感じるようなマナーもあるので、まずは簡単にマナーをチェックしてみましょう。
主題に直接入る
丁寧な手紙を書くとき、主題(本題)に入る前に「拝啓 〜〜〜 季節の挨拶」のような入りを書きますが、お悔やみ状ではそのような挨拶は抜きにし、「この度は〇〇様の訃報を受け、心からお悔やみを申し上げます。」と言ったように、主題に直接入った書き方をします。
敬称の使い方
故人様の敬称は、お悔やみ状の宛名の方(喪主)との間柄によって異なります。普段聞き慣れないような敬称もありますが、ここでは比較的聞き慣れている敬称の一例をご紹介します。
間柄 | 敬称 |
---|---|
父 | ご尊父様(ごそんぷさま) / お父様(おとうさま) |
母 | ご母堂様(ごぼどうさま) / お母様(おかあさま) |
夫 | ご主人様(ごしゅじんさま) / 旦那様(だんなさま) |
妻 | ご令室様(ごれいしつさま) / 奥様(おくさま) |
祖父 | ご祖父様(ごそふさま) / お祖父様(おじいさま) |
祖母 | ご祖母様(ごそぼさま) / お祖母様(おばあさま) |
息子 | ご子息様(ごしそくさま) |
娘 | ご息女様(ごそくじょさま) / お嬢様(おじょうさま) |
兄 | 兄上様(あにうえさま) / お兄様(おにいさま) |
弟 | 弟さま(おとうとさま) |
姉 | 姉上様(あねうえさま) / お姉様(おねえさま) |
妹 | 妹様(いもうとさま) |
叔父(伯父) | 叔父様・伯父様(おじさま) |
叔母(伯母) | 叔母様・伯母様(おばさま) |
死因を尋ねない
お悔やみ状に限らずお葬式などの場面でも同様ですが、死因を訪ねるような内容は書かないようにしましょう。
個人様が亡くなった直後で、ご遺族の方は心身ともに疲れている状態です。ご遺族の方を傷つけるような無礼な質問はせずに、故人様への弔意と、ご遺族の方への労いの言葉を手紙にしたためてください。
忌み言葉を避ける
重ね言葉や死に関する直接的な表現といった「忌み言葉」を使わないように注意が必要です。忌み言葉は多くの種類がありますが、代表的なものとしては下記の表をご参考にしてください。
重ね言葉 | 不幸が何度も訪れることを意味するような「重なり」や「連続」を意味する言葉 例:) 重ね重ね / たびたび / くれぐれも / しばしば / また / 追って |
---|---|
直接的な言葉 | 「死」などの直接的な言葉や、死因を聞く言葉 例:) 死亡 / 逝去 / 自殺 / 死因 / 存命中 |
不適切な表現 | 若者言葉や略語、マイナスな表現 例:) やばい / ぶっちゃけ / 頼りない / 頑固 |
仏式葬儀 の忌み言葉 | ほとんどのお葬式は仏式で行われるので、このような言葉は使わないようにします 浮かばれない / 浮かばれぬ / 迷う |
神式・キリスト教 の忌み言葉 | 神式・キリスト教のお葬式では、仏教に関する言葉は使わないようにします 成仏してください / 供養 / 冥福 / 往生 |
縦書き
普段手紙を書くときは横書きの便箋の方が書きやすいと感じる方も多いと思いますが、お悔やみ状などの手紙の場合は、日本古来の縦書き(右から書く)のものを使用しましょう。
また、便箋や封筒や白の無地のものを使用し、絵柄が入ったものを使用する場合は宗教や宗派に注意してください。
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手紙の文例
お悔やみ状は、送り主と喪主との関係性、喪主と故人様の関係などによっても内容が変わりますが、ここでは一例をご紹介します。
構成の方法
お悔やみ状の構成は次のような順番になるようにします。
- 主文
- 末文
- 後付け
主文
お悔やみ状の主文は、お悔やみの言葉や訃報を受けたことに対する驚きや悲しみ、お葬式などに参列出来ないことへのお詫びを書きます。
香典と一緒に送るときには、香典を同封している旨も書きましょう。
文末
文末にはご遺族の方への労いの言葉を付けるのが一般的です。「どうぞお体を大切になさってください」など、ご遺族の方に寄り添った一文をつけるようにします。
後付け
後付けには、お悔やみ状を書いた「日にち」「差出人」「宛名」を書きます。
また、後付けと文末の間に「合掌」と結語を書くこともありますが、これは故人様、ご遺族が仏教を信仰しているとわかっているときだけにします。仏教以外の宗教を信仰している場合や、信仰している宗教がわからない場合は文末の労いの言葉だけにしておきましょう。
文例
このたびはお父様のご逝去の報を受け、心からお悔やみを申し上げます。
かねてよりご療養中とは存じておりましたが、驚くばかりです。
本来であればご葬儀に伺うべきところ、遠方のためかなわず、お手紙のみとなりましたことお許しください。
心ばかりではありますが、御香料を同封いたしましたので、御霊前にお供えくださいますようお願い申し上げます。
ご生前のご厚情に深謝いたしますとともに、お父様のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
令和○○年○月○日 〇〇 〇〇(自分の名前)
〇〇 〇〇 様 (相手の名前)
落ち着いた後は弔問を
香典を現金書留で郵送するのは、あくまでも一時的な対応方法です。遠方に住んでいてどうしても訪ねることが難しい場合、自分の体調の問題などは仕方のないことですが、できる限り後日弔問をするようにしましょう。
特に仕事関係の都合により郵送した場合は、後日の弔問を必ずするようにしてください。
その際、すでに香典はお送りしていますので、再度香典を持参する必要はありません。(香典を二度渡すのはマナー違反となります)
弔問するときは、忌み言葉などの言葉遣いに注意したり、弔問前にご遺族の方の予定を伺うなど、最低限のマナーを守ることも忘れてはいけません。
香典の郵送に関するよくあるご質問
- 香典を郵送するときは普通郵便や他の荷物と送ってもいいですか?
- 香典は現金を入れるので、現金書留以外の郵送方法はNGです。また、他の荷物などと一緒に入れるのはマナー的にも良くありませんので、香典を贈るときは、香典袋とお悔やみ状以外のものは同封しないようにしましょう。
- 現金書留で送るときの香典袋の使い方はどうすればいいですか?
- 香典は郵送するときも手渡しするときも、包み方や書き方のマナーは変わりません。普段のお葬式に参列するときと同じように包みましょう。
- 連名の香典も郵送で送ることはできますか?
- 連名で包んだ香典でも郵送で送ることはできますが、できるだけどなたかが持参する方が無難です。もし遠方で当日に参列出来ない場合などは、郵送した後に後日代表者だけでも弔問をするようにしましょう。
まとめ
香典を郵送で送る機会はなかなかないという方も多いと思いますが、仕事の転勤が多い方や、遠方にもたくさんの知り合いがいる方の場合は、どうしても当日に参列出来ない場合も多くなります。
特に付き合いを最小限にしている方にとっては、代理でお願いできる人が近くにいないこともあるので、香典の郵送の仕方は覚えておいて損はないことですね。
- 香典はいつも通りに包む
- お悔やみ状を同封する
- 現金書留で送る
香典を郵送するときは上記の3つのポイントを守って、失礼のない様に、また法律に触れない様に正しく郵送する様にしましょう。